透析治療に必要不可欠な血液透析回路ですが、意外と種類が豊富で施設によるオーダーメードが結構多いのです。
こだわりの強い施設ほど細部にまでこだわり、cm、mm単位で独自持論の透析回路をメーカーに作成してもらっています。
しかし、震災や海外での有事や災害により透析回路の供給が滞るという自体が頻発しました。
そこで日本臨床工学技士会では透析用回路の標準化を行い同一規格の回路を規定する基準を作りました。
↓これね
どういう狙いがあるのかというと、透析回路を作成しているメーカーではそもそもですが、汎用回路というものがあります。
日本にある様々な透析施設での回路はオーダーメイドで作っている施設もあれば、メーカーが独自に作成してしている汎用の回路を使っているところもあります。
オーダーメード回路は希望の回路構成とできますが一般的には供給量が少ない為、高価で供給能力も低いというデメリットがあります。
汎用回路は施設の細かい要望の回路とはいきませんが、供給量が多い為に安価で供給能力も高いというメリットがあるのです。
しかしメーカーによって、汎用回路の仕様が異なる為に、ここいらで供給量が多い汎用回路の仕様を統一しようではないか!!これぞ汎用回路の標準化じゃい!!というわけです。
たとえばですが、印刷用のA4という紙ですが作成しているメーカーによってサイズがもし異なっていたらどうでしょうか? 〇〇企業のA4は縦が4mm短くて厚さが0.2mm厚いとか・・・
もしA4用紙の仕様がキッチリ整っていなかったら、コピー機もファイルも使い勝手も変わってきます。
そんな煩わしさがないようにA4用紙の基準というものが決められているのです。
透析回路もある程度の事項の基準を作っておくことのメリットがあるということが解ると思います。
もちろんオーダーメードしている透析回路にも標準化回路の特色を反映するような基準を作成しており、透析回路として機能させるべきポイントも押さえています。
今回はこの透析用血液回路標準化基準Ver.1.00の中身について考えてみたいと思います。
策定の目的について
この基準の目的はずばり、安全と回路の安定供給の2点です。
基準の内容について
ずばり、基準の内容は下記の図で示した通りです。
図の回路中の色がついている部分に標準化基準が決められたり、推奨項目が設定されています。
この標準化基準ですが、読んでもらえばわかるとおり基準としてのエビデンスが非常に低いと言わざるおえません。
たとえば、圧力モニターラインのチューブサイズは色々説明したあげく、設定している内径は内径平均の2.87mmとは全くかけ離れた1-2mmとしています。
圧力モニターラインやチャンバーサイズをなぜそのような値に決めたかをハーゲンポアゼイユの式などを出し長々と説明しているくだりがありますが、圧力定常状態の設定がお粗末で、温度での状態変化も考慮しておらず高校物理レベルで標準化ガイドラインとして出すレベルには達していません。
なんなら稚拙な計算式をだして笑いものになるより、各サイズにおける2/3チャンバ容量+ライン長容量表と圧力変動と空気容量における液面移動量表を記載しておけば良いだけの話です。いまいちです
補液ラインに関してはかなり、雑で他の部位のチューブサイズは詳しく記載されていますが、補液ラインの必要条件はサイズで記載されているのではなく、血液ポンプによって300ml/min以上の流量を確保する事が可能な内径となっており”手ぬいてんな!!”と言わざる終えません。
標準化のガイドラインなんですから、一般流通している平均値を出して平均に即したサイズと長さで且つ300ml/min以上の流量を確保するサイズを推奨だったらよかったのですが・・・いまいちです。
回路の滅菌方法に関しての基準も曖昧で、たくさんの滅菌方法の中からなぜかγ線滅菌と高圧蒸気滅菌のみを推奨しています。
人体への影響がない無害な滅菌方法と書かれているのにEOG、電子線、プラズマなどが無視されており、その根拠も曖昧です。
回路の長さもあいまいで、なぜかチャンバー後の長さだけ規定しています。
動脈側チャンバーの下流の長さは規定しているのに、同様の長さでも構わない静脈チャンバー上流(ダイアライザー出口から静脈チャンバーまで)の長さが決められていなかったり、静脈チャンバー後の長さは5種類提起されているのに同様の長さが必要なポンプセグメントから脱血上流部の長さが規定されていないなど回路として標準化の核心部分である回路長という点では推奨項目が少ないと感じます。
突っ込みどころ満載ですが、とりあえず今はVersion1.00ということなので、今後の改定を楽しみにつっこみを入れていこうと思います。