2020年敗血症に対するPMX-DHPについて

まずはPMXとは?

PMX-DHPをご存知でしょうか?

東レ・メディカル株式会社から販売されているトレミキシンというカラムのことをPMXといいます。

トレミキシンは東レが世界初の血中エンドトキシン除去向け血液浄化器で、カラムの内部にポリミキシンBという固定化繊維をロール状に巻きつけた物を言います。

トレミキシン

特に救急センターやICUにおいてエンドトキシン血症・敗血症ショック患者に保険適応があります。

なぜ商品名がトレミキシンなのにPMXと呼ばれるかと言えば、PolymyxinB(ポリミキシンB)の文字をとってPMXなんです。

あと、PMX-DHPDHPというのはダイレクト ヘモ パーヒュージョンの略で直訳で血液直接灌流といいます。

ようはトレミキシンに血液をぐるぐる回すという治療法です。

 

日本でのPMX-DHP

エンドトキシンを吸着してくれるPMX-DHPですが、敗血症に効果があると保険適応になった当初は集中治療医学会などでは症例発表などで医師やCEが敗血症患者や重度の火傷患者、サイトカインストームの状況にある患者に効果があって救命できると誰しもが発表していました。

・・・が、日本お得意の大規模施設間調査であるRCTは行われず本当に統計上効果があるのか?が議論されておりました。

海外では先駆けてRCTが何件か行われ、あんまり効果ないんじゃなーい?みたいな雰囲気になるも日本は”いやいや効果あるっしょ!!”的な人が大多数をしめておりました。

 

たとえば2017年のJSEPTIC-DIC studyのpost hoc解析とか

わかりやすく解説しているサイトがありましたのでご参考までに。

スポンサードリンク

 

 

でも海外のPMX-DHPの状況から集中治療医学会の2016年の敗血症治療ガイドラインで3つの質の高いRCTの結果から、PMX-DHPは実施しないことを弱く推奨すると結論ずけられました。

しかしSEPTIC-DIC studyからも本当は効果があるのでは?とエビデンスが不十分なこともあり、2016年にはまだ結果がでていなかったEUPHRATES trialという米国・カナダで進行中のRCTを待つというのが日本の状況でした。

実際に2016年ガイドライン策定委員会のPMX-DHPの推奨投票結果は実施しないことを弱く推奨が84.2%で実施する事を弱く推奨が10.5%もありました。

 

EUPHRATES trialの結果は??

EUPHRATES trialの結果ですが、結論からいうと敗血症の治療にPMX-DHPの効果は無い!!事がわかってしまいました。

海外ではこの事でPMXでのエンドトキシン吸着は治療の選択として価値がなく、逆にやれば患者に不利益がおこる治療と認識されました。

わかりやすくEUPHRATES trialを解説しているサイトがありましたのでご参考までに。

 

日本でのPMX-DHP大好き派の言い分

 日本では一時期、PMX-DHPが効果があると信じて症例発表がさかんにされていましたが、ここ数年では随分PMX信者やPMMA-CHDF信者(敗血症治療で早期に血液浄化を行う信者→今は効果が無い事がわかっている)が減りました。

 しかし、日本ではPMX-DHP信者はまだいるようでその言い分は海外でのRCTではPMX-DHPの完遂能力が低い、フランス人は血液が固まりやすい、抗凝固の薬が違うとか、極め付けは日本の血液浄化能力は最高峰だから結果がちがって当然とかいろいろあるようです。

現実的には統計上にはっきり有意差が無い事、さらには行うことで不利益が生じる事が示されている以上、積極的に行わないほうが良さそうです。

 

2020年現在のPMX-DHP

最新のガイドラインは出ていませんが、2016年末にわかっていなかったRCTの結果から最新の敗血症ガイドラインでは実施しないことを推奨する(強い推奨)にグレードアップする可能性が高いといえます。

ですから、PMX-DHPという治療自体が行わないほうが良い治療法となる事必須です。

スポンサードリンク
カテゴリー: アフェレーシス関連, 透析関連 パーマリンク