透析治療は、なんらかのバスキュラーアクセスを介して200ml/min以上の血液を出し入れしています。
特に内シャントから17G〜15Gの留置針を2本刺して血液を浄化する方法が一般的です。
今回はその透析留置針に焦点をあて、構造や種類、特徴などまとめてみます。
透析留置針の種類について
種類は大きくわけて5種類程度存在ます。
メーカーでいうとメドトロニック、メディキット、ニプロが有名でとりわけメドトロとメディキットがシェアでいうとトップクラスです。
- クランピングチューブ
その名のとおりクランプ(挟む)ためのチューブがついており、透析を始める時に鉗子でクランプして回路を接続する事ができます。
種類も固定用に羽がついたものであったり、確実に血管内に留置する事を確認する為に2.5ccのシリンジがついた製品があります。
最近では針刺し防止機能付きの留置針も発売されており、内筒針を引き抜けば針の先端が様々な機構により保護された状態で出てくるというものが製品化されています。
ただし、外筒に再度内筒針を挿入する事はできなくなります。 - メカニカルバルブ接続方式の留置針
こちらは、クランピングチューブタイプでなく、透析針に逆流防止弁と機械機構で透析回路を接続する時に針と血管内が開通するといった鉗子いらずの透析留置針になります。
クランピングチューブタイプと比してやや高価であるという理由からコストを重視するクリニックなどでは導入が遅れているのが現状と言えます。
最大のメリットは鉗子を必要としないので、回路を外せばすぐ離脱でき、災害時対策などに役立ちます。
また、鉗子フリーにできるので、鉗子のオートクレーブ滅菌などのコストや労力を考えればお得かもしれません。
- ニードル針
上記の二つの留置針と違い、金属針を用いたものになります。
金属針ですから、シャント肢の動きに制限がかかります。
常に切れ味鋭い針が血管内に留置されているわけですから少し危ないような気がします。
メリットもあり、太い金属針ですから切れ味がよく皮膚表層にある血管で、血管壁が肥厚した要は硬いシャントには抜群に威力を発揮します。
しかし上記の理由から、あまりおめにかからなくなってきています。完全に好みの問題です。 - シングルニードル針
シングルニードル(SN)とは穿刺困難時などの一時的に透析を行う時に送血と脱血を同一の留置針で行う治療です。
通常の透析と比べ効率が悪くなるので、緊急時に行う事が多いいでしょう。
針は上図のよううに途中で二股になっているのが特徴で、シングルニードル針の他に、通常の穿刺針に取り付けるだけでシングルニードル治療ができる二股のアタッチメントも存在します。 - ボタンホール針
ボタンホール針とは穿刺部位を変えずに毎回同一角度で穿刺を行い道を作る事で、穿刺時の痛みを大きく改善する夢の穿刺方法です。
穿刺には熟練が必要で、穿刺針も専用のダルニードルといって鋭くない穿刺針でもって穿刺します。
上図がダルニードル針
最近ではメディキットが針の刃面をなくしたものなど発売しています。
スポンサードリンクボタンホール穿刺は感染やそもそも同一部位を同一角度で穿刺する事自体が難しいので、日本ではあまり普及していません。
痛み軽減の為に感染を誘発しては本末転倒です。
透析留置針の構造と素材の特徴
ここではスタンダードなクランピングチューブ留置針を元に構造と素材について説明します。
先端形状
まず図で針の先端は内筒と外筒との差がどのメーカーでも5mm程度段差になっています。
この5mmはものすごく重要で血管を穿刺する場合、金属の内筒がまず血管壁を突破しその時血液のバックフラッシュがあるのですが、その時外筒の留置針はまだ血管外ですので針を進めようとしても進める事ができず失敗する事があります。
ですのでこの段差を頭にいれてバックフラッシュがあって針を寝かせて、5mm進めると頭においておかなければなりません。
外套の先端には側孔がついているものと付いていないものがあります。側孔がついているほうが高流量を期待できます。
留置針の長さ
どのメーカーも長さはショートは30mmからロングでも38mm前後ナインナップがあります。
短いと深いところの血管に届きませんし、長いと圧力損失によって設定流量と実流量との差が開いてしまいます。
たとえば250ml/minでポンプを回しているのに実際には230ml/minでしか血液が脱血できていないなどといったような事がおこります。
一番良いのは短く太い針での穿刺ですが、設定流量で針の太さや長さを選ぶのが良いです。
上図はメディキットのハッピーキャスの添付文書からの引用ですが、落差で各留置針の吐出流量値の表記です。
外套の素材と機能
留置針の素材にはポリプロピレンや弗素樹脂(フッソ)が使われています。
それぞれの特徴は素材の厚さなども関係してきますが、ポリプロピレンのほうがしなやかなイメージがあり、弗素樹脂はやや硬いような印象を持っています。
留置針(外套)の表面や内筒の表面にはシリコーン油というオイルが塗られており、皮膚や血管に針がスムーズに入っていくようになっています。
実際に新品の針を手にとって、少し触ってみるとヌルヌルするのがわかると思います。
このシリコーンオイルも分子量によって粘土が大きく異なるのでメーカーによっては滑りが異なるかもしれません。
クランピング部の素材
鉗子でクランプする部分ですが、ほとんどの留置針ではシリコーンチューブやポリ塩化ビニルが使用されています。
素材での特徴ではシリコーンの方が優れています。
対キンク性能やしなやかさにおいて、安価なポリ塩化ビニルと一線を画すると考えています。
接続部の素材
接続部の素材にもメーカーによって違いがありますが、ポリプロピレンやポリ塩化ビニルを採用しているメーカーが多いです。
ポリ塩化ビニルですが、安価で汎用性があります。単回使用では特に問題はないですが、アルコールによるクラック(割れ)、回路が抜けなくなる過嵌合(かかんごう)などが起こるリスクがあります。
見分けかたは、接続部が透明な部品であればそれはほぼ”ポリ塩化ビニル”だとおもって間違いないです。
それに対してポリプロポレンやポリウレタンという素材を使っている商品もあります。
その場合は不透明の接続部である事がほとんどです。
ポリ塩化ビニルと違いクラックや過嵌合がおこに憎いと言われています。