はじめに
血液透析を行うにはご存知の通り、2本の透析穿刺針をシャントに刺して血液を浄化していきます。
ご存知でない方はこちらのサイトやこちらのwikiより透析療法についてラーニングしてください。
透析患者さんによってはシャントの状態により穿刺がうまくいかない事もあります。
そんな時に登場する穿刺の達人看護師さんや技師さん達がどこの透析施設でもいるでしょう。
しかし、太い穿刺針をなんども刺されるという”苦痛”はできるだけ避けたいものです。
2018年現在ではそんな穿刺が難しい患者様の穿刺ストレスを限りなく少なくするような方法の一つとして超音波画像装置を用いたエコー下穿刺を行う施設が増えてきています。(流行り??)
今回はそんなエコー下穿刺方法についてご紹介します。
穿刺技術に関してはシャントの事や穿刺部位、穿刺針の構造や穿刺角度など”透析穿刺技術”が必須のベース知識として必要となりますが、そんなベース知識がある人を対象とします。
ですので、”穿刺ができる人”がエコーを用いてさらに難しいシャント穿刺技術を習得する事を目指します。
エコーのきほんの”き”エコー装置について
エコー下で穿刺を行うにはその道具であるエコーの事をよく知っておかなければなりません。最低限知っておかなければならない事は以下の5点になります。
プローブ
まず、エコーといっても様々なプローブや周波数があります。
透析室で最新のエコーを買ってもらったのなら良いのですが病棟や外来からのお下がりで透析の室エコーを代替している事もあるでしょう。
エコーにはたくさんのプローブが存在します。
大まかに分けると、リニア、セクタ、コンベックスという3つが存在します。
リニア
リニアは超音波を直線的に放出するので接地表面の視野をおおく取る事が可能なプローブです。
これがシャントエコーに使えるプローブでーす。
周波数は市販されているもので、2.5MHz〜12MHzのものがあり、周波数が高ければ高いほど表層の血管が綺麗にみれます、ただ、リニアの弱点は5cm以上の深い所の組織の描出がとても苦手です。
これは周波数を高く設定しているせいで、周波数を高くすると近くは鮮明に見えますが、深いところが見えなくなるのです。
コンベックス
コンベックスはのように超音波を放射状に放出しているので、より深い所の組織を広範囲に見る事ができるプローブになります。
周波数が7MHzまでの製品が多く、組織表面の描出は苦手です。
これでシャントをみるのは至難の技です。
主にお腹の臓器を見る場合が多く、特に肝臓系や膀胱など腹腔臓器を見る時に重宝します。
ですので、シャントには不向きでーす。
モード
エコー装置には様々なモードが存在しますがシャント穿刺に必要なモードは”Bモード”になります。
BモードのBはブライトネスといい輝度の事をいいます。要は暗さですね。
プローブから複数の超音波ビームを発射し音響インピーダンスの異なった物質間の境界面で反射などから組織の濃淡を決めて画像化すると2次元画像が得られます。
まぁ単純にプローブで当てた部位の輪切りや縦斬りの映像を見る事ができると考えてOKです。
他にもパルスドプラやカラードプラなどがありますが、こちらは血流を評価する場合に用いる事が多くエコー穿刺というよりはシャントをエコーで評価する場合に用いる事が多いです。
ゲイン
ゲインとは反射してくる微弱なエコー(反射波)を増幅する倍率の事です。
ものすごく簡単にいうとゲインを上げれば画面は白くなり、下げれば黒くなる。
ステレオやラジオの volume と同じようなもにですね。
暗いと血管が見えないので見えるようにゲインを調節する必要があります。
注意点はゲインをあげ過ぎるとノイズがのって画像が少し荒くなります。
シャント血管のエコー下穿刺ですと、シャント血管が描出できれば良いので血管内部が認識できれば良しです。
フォーカス
フォーカスと聞いて思い浮かべるのは”カメラ”と思う人がいるでしょう。
じつはカメラのフォーカスと意味合いは同じです。
フォーカスとは”焦点”といいフォーカスがずれていると画像がぼやけて見えます。
穿刺するターゲット血管がどの深さにあるかでフォーカスを調整する事が重要です。
シャント血管では1cm程度潜っている血管でも穿刺には深いと判断するくらいなので、おおよそ表層から1cm程度までのフォーカス設定で十分といえます。
短軸画像と長軸画像
血管に対してどのように超音波ビームを当てるかで短軸像、長軸像と呼び方がかわります。
血管を輪切り常にエコープローブを当てると血管を輪切りにした映像が得られ、血管に対して縦方向にプローブを当てると血管を縦に切ったような映像が得られます。
前者を短軸像、後者を長軸像と呼びます。覚えておきましょう。
左が短軸 右:長軸
短軸と長軸ではメリットとデメリットが存在します。
短軸では血管内や血管周囲の状態が把握できます、それに対して長軸像は血管の走行にそった縦方向の映像が得られます。
短軸像で針を刺す場合内の針の位置関係はわかりますが、針の進む方向の血管内の状況がつかめません。
逆に長軸像だと、針の進む方向の血管内の状況はつかめますが、針が血管内のどの位置にあるのか、たとえば中心にあるのか血管の端にあるのか?などがわかりません。
どちらも一長一短があるので、どらの描出にも慣れておく必要があります。
エコー画像の見方
エコー下穿刺を行う前にしばらくは、エコーを用いて血管を観察する練習をするととてもエコー下穿刺に役立ちます。
まず血管の走行が視覚的にわかりますし、血管内腔の広さや深さを知る事ができます。
また、エコーでのぞいた血管内の直径と実際に触診した血管の状態を合致させる事で穿刺イメージをやしないます。
エコー下穿刺で画像の見方としてとても重要になるのは深さと血管の大きさを把握する事です。
多くのエコーでは画像の大きさを可変できるようになっており、実際の血管径や深さよりやや大きく画面に描出させている事がほとんどです。
エコーでのぞいた時に血管が大きく見えるけど実際の直径は1cm以下ということもあります。
深さや長さがわかるように目盛りの表示のあるエコーがほとんどですので、そういった指標を観察できる癖をみにつける必要があります。
エコー下穿刺でも重要デバイスの知識
エコー下穿刺でも穿刺を行う針の知識も重要です。
エコーを覗いていても、血管に針のどの部分まで挿入しないとしっかりと針を留置できないという外套、内筒問題があります。
またエコー下で穿刺を行うシュチュエーションで1cm以上の深い部位の穿刺を行うという事があると思いますが、針の長さによっては深いところまでとどかないもしくは届いてもほんの少ししか血管内に留置できないなんて事もあります。
しっかり自施設の穿刺針デバイスの詳細について知っておく必要があります。
エコーを用いた穿刺の実際
さぁいよいよエコー下穿刺について学んでいきます。
エコー下で行う穿刺は穿刺困難なシャントをエコーによる画像補助により確実な穿刺針の血管内留置が最終的な目的です。
しかし、練習なしでエコー下穿刺を行うとうまく行かない事がよくあります。
そんな映像をみながら失敗するなんて・・・と思えますが意外と難しいものなのです。
今回は失敗しないエコー下穿刺法をラーニングする為に必要な知識を含めて実際のエコー下穿刺について考えます。
エコー下シャント穿刺の失敗ポイント
- エコーを当てながら穿刺するが穿刺針が見えずどうしようもなくパニクる
- エコーでみていたのに血管の後壁まで穿刺針がいってしまう・・・
- 血管に針を留置し内筒を抜くと外筒が血管外だった・・・
この中でもダントツに多いのが針をうまく描出できないと言う問題です。
この点では短軸像は有利で針を常に描出できますしかし、長軸断層像では針の描出がうまくできない事がよくあります。
この解決方法はエコープローブの固定あるのみです。
血管とプローブが固定されずれないようにするのがポイントになります。
エコー下穿刺マニュアル
とりあえず、マニュアルは作っておいたほうがよいでしょう。
とても参考になるマニュアルがあるのでご紹介します。
高橋内科クリニックさんがUPしているものです。
senshi20160506←透析エコー下穿刺マニュアル
エコー下シャント穿刺の動画で学ぶ
実際にエコーを用いた穿刺では文字によるマニュアルよりも穿刺の実際を写した動画をみたほうがとても参考になります。
考え方はそれぞれですが、エコー下穿刺の初心者はまずは長軸穿刺法からラーニングしたほうがやりやすいと思います。
まずは長軸穿刺法の動画からどうぞ
動画はまつした腎クリニックが動画UPしている実際の長軸穿刺法になります。
映像から血管まで、約1cmと深めの血管で穿刺針が1/3入ったところでエコー画像に穿刺針が描出されます。
長軸穿刺法ではとても参考になる動画です。
次の動画は高橋内科クリニックさんがUPしている動画です。
穿刺法は短軸描出を用いた短軸穿刺法で最後にしっかり針が留置できているかを確認するのに長軸像も描出しています。
短軸穿刺は穿刺針を進め、プローブをスイープ(傾ける操作)などマルチタスクな技術が必要な為すこし敷居が高いですが、慣れれば最高です。