輸液セット、三方活栓、留置針、CVカテーテル、透析などを行うダブル/トリプルルーメンカテーテルなど医療材料には様々なことなる医療素材が用いられています。
その医療材料素材ですが、この数十年で様々な改良が加えられ、DEHPフリーやPVCフリーなど生体にとってより侵襲の少ないもので作られるようになっています。
そこで、今回は医療材料素材に焦点を当ててどのような素材が使われているか?また、どのような特徴があるのかを説明していきます。
ポリ塩化ビニル(PVC)
この素材はありとあらゆる物の素材として私たちの生活に溶け込んでおり、なくてはならない素材の一つです、ソフビと呼ばれる人形や水道の配管に使う塩ビ管などです。
医療業界でも20年前までは輸液セットなどでこの素材が使われていましたが、素材を柔らかくする可塑剤が熱や薬剤、物理的な外力によって溶け出して、体に悪影響をあたえると言う事がわかり(いわゆる環境ホルモン問題)最近では可塑剤であるDEHPを使わない塩化ビニルとしてDEHPフリーのPVCを素材とする事がほとんどです。
ちなみにDEHPという可塑剤はフタル酸2-エチルヘキシルといいます。
よく勘違いするのはDEHPフリーのセットはPVC(塩化ビニル)であって、可塑材のDEHPを使っていないという物です。
ですので、PVCフリーではありません。 したがってDEHPフリー製品はPVC(塩化ビニル)であるので、PVCに吸着特性のある薬剤には使えません。
ポリブタジエン(PVCフリー)
使用されている医療用具としてはPVCフリーの輸液セットが有名です。
合成ゴムの一種でじつは自動車のタイヤに使われている合成ゴムに近い素材で、かつ工業的な需要でも2番目くらい高い事でよく知られた素材です。
特徴は弾性、耐摩耗性、低温特性に優れいわゆる、劣化しにくいという輸液セットにとってはもってこいの素材です。
輸液セットでPVCフリーと書いてある素材はだいたいこのポリブタジエンが使用されているといっても良いでしょう。
特徴はお高いのと、体にとって有害な物質を溶出させない事、セットへの薬剤の吸着がない事です。
ポリカーボネート
この素材は実は私たちの生活の中でなくてはならない素材としても有名です。
身近な素材でプラスチックでパキッと割れるプラスチックがこのポリカーボネートです。
たとえば、安くて硬い携帯ケースなどにはこのポリカーボネートが使われています。
使われている製品は多種多様で三方活栓、輸液セットの接続部、チューブやドレーンの接続部や様々な透明硬質容器など多種多様です。
これほどまで利用されている理由は、まず安いと言う事、透明度が高い事、そして硬く強度があると言う事です。
透明性・耐衝撃性・耐熱性・難燃性・安定性などにおいて高い物性を示し、耐衝撃性は一般的なガラスの250倍以上といわれています。
しかし、硬いというメリットが実はもろ刃のヤイバでもあり、硬いがゆえに伸縮性がなく脂肪乳剤、脂肪乳剤を含有する製剤、油性成分、界面活性剤、アルコール成分を含む製剤使用下において、外力や回転トルクを加えるとひび割れが発生してしまうというデメリットがあります。
また、ひび割れだけではなく、接続がハマりすぎて抜けなくなるという”過嵌合(カカンゴウ)”と言う現象が起こりやすいです。
硬ければ”強い”というのは間違いで硬すぎると”割れる”のです。
日本刀も同様で、強く鍛え過ぎると”硬く切れ味鋭く”なりますが脆くなります。その微妙な調整を刀鍛冶の刀匠がハンマーで神業的な仕事をするのです。
ポリカーボネートの三方活栓と高いポリプロピレンの三方活栓を見分ける方法は活栓部分の透明度をみれば一目瞭然です。
透明度が高く透き通っていれば割れやすいポリカーボネート製品で間違いありません。
ポリプロピレン
この素材も医療用品にとても多く使用されています。
ポリカーボネートよりは透明性は劣りますが、一応透明にもできます。
汎用プラスチックの中では最も軽いプラスチックなんです。
硬質な樹脂ですが繰り返しの曲げに対しての耐性が高く、酸、アルカリ等耐薬品性も高いため薬品の容器包装などにも使われています。また耐熱性も110℃と汎用プラスチックの中では高い性質を持っています。
そう、もうおわかりですね、ディスポ注射器としては最高の素材になります。
また繰り返しの曲げなどに高い耐久性があるので何度も繰り返し接続したり、外したりする部位には高頻度に用いられます。
例えば透析のダブルルーメンカテーテルの接続部などはポリカーボネートを使われていた時期がありましが、割れたりするという問題から最近ではポリプロピレンが使われています。
また、ドレーンチューブや尿道バルーンカテーテルなどには高確率でこの素材が使われています。
ポリウレタン
医療素材でのポリウレタンはポリプロピレンと似たような部材で使われています。
よく使われるのは体内に長く留置するチューブル類にはこのポリウレタンが高頻度に使われるようにってきています。
高張力や耐摩耗性が優れていますが、徐々に加水分解によって経年劣化すると言われています。
日常製品にもよく使われておりたとえば家庭用の食器洗浄用のスポンジなどはこのポリウレタンが使われています。
ラテックス
ラテックスで思い出すのはやはり医療用手袋でしょう。
ザ 手術用手袋といえばラテックスです。
生ゴムなんていう人もいます。
まず素材としては天然由来の素材、たとえば木の樹液から生成したりします。
他の素材は石油から生成するのですが、このラテックスはゴムの木からの樹液を元に作られます。
やはり特徴としてあげられるのは手触りやフィット感が良いという人がいる事や安価であるということ、デメリットはラテックスアレルギーの人がいる事です。