よく透析時の処置として下肢挙上が教科書に書かれていたりします。
他サイトでは透析時の下肢挙上について否定的な意見があります。
その内容は下肢挙上には血圧を上昇させるメリットが無いばかりか、下肢の血流を低下を招き足の循環不全を憎悪させるというのです。
しかし、そのようなサイトでのエビデンスはネットで流れているひとつの論文を取り上げての見解なので、十分な信頼度がありません。
今回は透析時の下肢挙上について様々なガイドラインやRCT(他施設間ランダム化試験)などから”透析で行われる下肢挙上”について考察してみようと思います。
透析時の下肢挙上の考え方
透析時の下肢挙上に関しては2つの考え方があると思います。
1つは持続的な血圧低下を防ぐ為に行う下肢挙上
もう一つは透析時のショック時の対応としての下肢挙上です。
両者とも下肢挙上に伴う効果を、下肢挙上に伴う静脈灌流の増大からの一回拍出量の増大、血圧の上昇を狙っています。
透析施設では教科書にのるくらいメジャーな対応策なので、行なっている施設がほとんどだと思います。
しかしながら、下肢挙上における透析時の血圧低下防止を裏付けする論文が少ないく、本当に正しい医療エビデンスが存在するのか?が問題です。
医療エビデンスでは大規模なRCTが実施されていればかなり信頼できるのですが、上記の受動的な下肢挙上における血圧の上昇に関して限られてた施設で、しかも検討症例数が少ないという論文が散見しあまり信頼できません・・・
これらの論文でも結果がけっこうバラバラであったりするのでなおさらです。
代表的な結果では、下肢挙上行うとIVC径が増大するも、一回拍出量や心拍数は有意差はみとめられないという結果です。
そういった、”効果”があやふやな下肢挙上を現在日本の多くの透析施設が実践している現状にあるといっていいでしょう。
下肢挙上の医療エビデンス
日本の透析医療領域ではどうやら下肢挙上に関しては大きなRCTが行われておらず、”静脈還流がおそらくあがってその結果血圧や一回拍出量もあがるだろう”という推測のもと下肢挙上は行われているわけですが、たくさんのガイドラインが出ている救急領域での下肢挙上はどのような判断がされているのでしょうか?
一般社団法人 日本蘇生協議会 が出している「JRC 蘇生ガイドライン 2015 オンライン版」がわかりやすくいいと思います。
このガイドラインはアメリカ心臓協会(AHA)の丸パクリで有名ですが、下肢挙上の処置についてこのように書いています
。
30~60°の下肢の受動的な挙上には一時的(7 分かそれ以下)な利点があるかもしれな いことを示唆するいくつかのエビデンスがあるものの、ショックの傷病者への推奨体位 は仰臥位のままとした
これは急病者を下肢挙上にする事で7分未満までなら、循環に関する利点があるかもしれないけれど急病者を動かすデメリットを考えて推奨体位を仰臥位としたといっているのです。
そして、30~60°の下肢の受動的な挙上には一時的(7 分かそれ以下)な利点があるかもしれな いことを示唆するいくつかのエビデンスがある
とも述べている事から、ショック時の初期対応としては下肢挙上は効果はあるかもしれないと言う事です。
ガイドラインにはその判断にいたった内容が詳しく書いてあるので、気になるかたは一読ください。↓
ガイドラインにも書いていますが、7分を超えるような慢性的な下肢挙上を行う事は循環動態をより良いものにする効果は全く無いと言えます。
まとめ
透析時の下肢挙上のうち、血圧低下予防や持続的な低血圧に対する受動的下肢挙上は全く意味がないばかりでなく有害である。
しかし、透析時におこるハイポドレミックショック時の初期対応としての7分未満までの下肢挙上は静脈還流を増大させ血圧を上昇させる効果があるかもしれないという事です。
勉強になりました。