透析時に役立つ浸透圧の事
透析時に浸透圧が変化し血圧の変動や不均衡症候群とよばれる症状がでるとよく教科書などに書かれています。
透析時に重要となる浸透圧には2種類存在する事をご存知でしょうか
ひとつは血清浸透圧でもう一つが膠質浸透圧です。
この二つを切り分けて説明している書籍はまれなのでご紹介しときます。
血液と脳細胞の血清浸透圧差から一過性の脳浮腫を起こし、吐き気け気分不良などを起こす不均衡症候群は透析導入時などによく起こると言われており、その機序は上記に述べた通りです。
透析導入時は毒素が体内に溜まっているため、血清浸透圧が上がっているのが通常で、それを急激に浄化する為に起こります。
ですので、慢性維持透析患者ではあまりその症状はでない事がほとんどです。
上記のような症状や透析前に透析液検査で浸透圧といわれる検査を行う”浸透圧”がじつは狭義の血清浸透圧なのです。
もう一つの浸透圧は主にアルブミンが関与するもので、膠質浸透圧といいます。なお膠質浸透圧をコロイド浸透圧などと言う場合もあります。
広義の意味での血清浸透圧とは膠質浸透圧も含めたもので、全ての浸透圧と言う意味なのですが、医療世界では膠質浸透圧とは切り離して論じる事が多いのです。
透析液の浸透圧について
透析液の血清浸透圧の正常値は280~300mosm程度でしょう。(教科書によってばらつきがあります)
その基準値はもちろん生体の浸透圧がその値程度だから透析液の基準値もその値なのです。
厳密にいうと生体の血漿組成をまねると基準値の浸透圧になるといったほうがいいかもしれません。
検査方法は施設によって様々で、血液ガス検査で浸透圧を計測したりオズモスタット計で計測したりと沢山の計測方法があります。
じつは結構この浸透圧というのは簡単に推測値を得る事ができるのです。
透析液に限らず血液の血清物質、とくにイオンと呼ばれる電荷(プラスやマイナス)はプラスとマイナスが同じだけ存在します。
プラスとマイナスが同じだけあるからうまくバランスが取れて安定しているんです。
そのバランスが崩れる事は電気的にありえず、何らかの緩衝作用が働きます。
そんで、話を元にもどすとプラスのイオンの代表選手がNa、K、Mg、Caでマイナスの代表選手がCl、Hco3などです。
血清浸透圧とはそれらのイオン化した電荷の物質量なので、mEq/Lなどのイオン化数を表す単位を足すだけで算出されます。
簡単な式でよく利用されるのが下記の式です。
2 ×Na (mEq/L) + グルコース (mg/dL)/18 + BUN (mg/dL)/2.8
透析液の浸透圧での簡易確認では透析装置に表示されているNa濃度計の値をただ単に2倍してやったら、ほぼ血清浸透圧とみていいでしょう。
たとえばNa計が142mEq/Lだったら、2倍して2×142=284mosm/L とまぁこんな具合です。
透析時の浸透圧
透析治療は除水と血液を拡散や濾過によって浄化する治療です。
とくに透析時の血圧低下の主因は除水による循環血液量の低下である事は周知の通りです。
血圧の下りかたは緩やかに下がる人もいれば、一気にどかーんと下がってショック状態になったりする人なんかもいます。
そんな透析治療での合併症ですが、ここでも浸透圧が一枚かんでいます。
除水をしても血圧を維持できるかたがほとんどですが、その機序は透析に伴う除水によって血管内から水を引きます。
そのぶん血液が濃縮し、抹消での組織間と血液との間で濃度勾配が生まれます。
血液がのほうが濃縮していますので、同様の濃度になろうと組織間から血漿が血管内に移動するのです。
これをプラズマリフィリングといって”血漿再充填現象”などと呼ばれます。
実はこのリフィリングですが、大きく関与しているのはアルブミンによる膠質浸透圧なのです。
アルブミンの正常値は3.5~5.5mg/dLです。
ですので、だいたい50kgの人でアルブミンが4g/dLだとすると血中には140gのアルブミンが存在する事になります。
このアルブミンですが1gでおおよそ12~25mlもの水分を保持する能力があります。
ですから、低栄養の透析患者さん、特にアルブミンが2g/dl前後の患者さんなどで長時間の除水ができない理由はここにあります。
浮腫があって、溢水とわかっているのに除水ができないのは血管内の除水をある程度するとアルブミンが関わるリフィリング速度が除水においつかなくなり結果的に血圧が下り除水ができなくなるのです。
また、血液をきれいにしすぎると、アルブミンが関わる膠質浸透圧とは別の血清浸透圧がさがり、同様に抹消でのリフィリングが低下するという説もありますが、現在ではそのような現象はほぼ限定的(というかあまりないと言われてきてます)でアルブミンがかかわる膠質浸透圧のほうがよりリフィリングに関与していると言われいます。