透析治療において内シャントであるAVFやAVGがなんらかの理由により作成できない、もしくは機能しない、もしくは内シャント作成が適切でない患者様の為にカテーテルを用いたバスキュラーアクセスが存在します。
大きく分けると短期留置型と長期留置型に分類されます。
今回は長期留置型のカテーテルに焦点をあてます。
長期留置型カテーテルと短期留置型カテーテルの違い
長期留置型カテーテルは別名”パーマネントカテーテル”なんて呼ばれたりします。
パーマネントとは美容室で行うまさに”パーマ”と同じ意味でpermanent:長持ち、恒久的、永久的などと訳されます。
最初に述べましたが、内シャントが作成でいない、機能しない、そもそも循環器的に内シャントが適切でない患者様に挿入されます。
短期留置型カテーテル(テンポラリーカテーテル)との最大の違いは
- 皮下組織に癒着させ、カテーテルが抜けないようにする為、フェルトなどで作成したカフがついている。
- 皮下組織に一部トンネルをつくりそこにカテーテルを通し固定する。
上記がテンポラリーカテーテルとの違いで、読んで字の如くであり長期的に使用するにあたりカテーテルの抜けやカテーテル感染を防ぐ為にカフとトンネルが最大の違いです。
メーカーについて
パーマネントカテーテルも様々なメーカーが発売しています。
メーカーによっては長さや長さの表記の違い、カテーテル素材の違い、硬さ、しなやかさ、挿入方法手順の違いなど細かい部分が異なります。
最近では感染が起こりにくく抜けにくいのはどこだ?なんていう研究発表があったりしますが???違いがあるのでしょうか?
有名なメーカーをあげておくと
ハヤシデラのスプリット/ヘモキャセカテーテル
メドトロニックのPalindrome Precision カテーテル
パーマネントカテーテルの素材について
ほぼどのメーカーもカテーテル素材はポリウレタンやシリコンを採用しております。
個人的な意見ですが、柔らかさ(しなやかさ)でいうと同じポリウレタンやシリコンですが、ハヤシデラ>メドトロ>ニプロ>BARDの順位かなと思っています。あくまで個人的見解です。
カフにはフェルトを使用されており、カフの大きさフェルトの毛羽立ちなどちょっとずつ違いがありますのでメーカーさんに一度サンプルを見せてもらうと良いかもしれません。
長さについて
パーマネントカテーテルは皮下トンネルを作成しますので通常の短期留置カテーテルとは長さが違ってきます。
おおよそですが、右内径静脈用で19cm〜23cm
左内径用またはその他の部位で28cm〜30cm前後のラインナップが一般的です。
また接続部がカーブしているものとストレートの物が存在します。
ストレートだとトンネルを作成する際あまりカテーテルを曲げるとカテーテルがキンクし潰れてしまいますが、それを防ぐ目的で緩やかにカーブした製品も存在します。
挿入方法
セルディンガー挿入
セルディンガー挿入はカテーテル本体をワイヤーをガイドにして挿入する方法です。よく短期留置型のカテーテルはこの方法で挿入します。
なぜかというと短期で使用するカテーテルはカテーテルが硬く作ってあり、コシがあって挿入する際もフニャッとならずに静脈内に進める事ができるからです。
パーマネントカテーテルは長期留置を念頭に入れてますので、柔軟性があり柔らかいのでなかなかセルディンガーでは挿入しづらいのです。
メーカーによってはセルディンガーでうまく挿入できるようにカテーテルにコシを持たせるダイレーターをカテーテルに内に挿入してセルディンガー法で挿入するという製品もあります。
ピールアウェイ
こちらはセルディンガー法とはやや違い、ワイヤーを挿入したあと、まずカテーテルが内側に十分入る”ガイド菅”をワイヤーに沿って静脈内に進めます。
その管のなかに直接柔らかいカテーテルを挿入しながら、管を抜きつつ(剥ぎながら:peelしながら)カテーテル挿入していきます。
動画だとよくわかりますね。
あとこの動画だとトンネルの作り方(トンネラーの使い方)もあるのでイメージがわくと思います。
カテーテルの先端位置はどこが良いのか?
メーカーによりますが、カテーテル先端にX線不透過のマーカーがあったりします。
そのマーカーによってカテ先がどの部位にあるのかを判断できます。
安全な中心静脈カテーテル挿入・管理の為の手引き 2009 日本麻酔科学会
では下図の如くカテーテル位置が指南されています。
上記の手引きによる挿入位置は、中心静脈栄養を行う事を念頭に入れての位置(高カロリー栄養でも静脈炎を起こさない)なので、透析に必要な高流量の血液を送脱血する事は想定していません。
すべては医師の判断ですが、ZoonAあたりにすこしカテ先が入るくらいが最もflowが良いとされてます。
カテーテルの取扱説明書にも書いていますが、あまりカテ先を進めるのも実は良くありません。
禁忌・禁止事項でカテーテルを右心房・右心室に留置しない事を明記しているカテーテルもありますので十分注意して介助・挿入するようにしましょう。