透析時低血圧に使用する昇圧薬について

透析前や透析中、透析後などに低血圧になる患者様がいると思います。

透析従事者なら、心臓エコーなどから正しくドライウェイトを設定したり、緩徐な時間除水を設定しても起こってしまう低血圧も経験する事があると思います。

そんな低血圧に対して透析前や透析中に注射や内服によって昇圧薬を投与する場合があります。

そんな透析室でおこる低血圧に対する昇圧薬について今回は説明します。

 

血圧とは

血圧というのは、よく心臓から拍出される血液量と抹消の血管抵抗の積、ようは掛け算と言われます。

イメージしてみてください、水道のホースから水を勢いよく出す為ににはまず水道の蛇口をひねって水を出し、さらに水道の出口部を指で狭くすると水道ホース内の圧力は上がり、水は勢いよく飛びます。

水道の蛇口の調節で水の勢いは変わりますし、指でホースの出口部の狭さを調節するとこれもまた、水の勢いが変化します。

この事は私たちの体の中を循環している血液、さらにそれからなる血圧も同様に考えられます。

水の量を調整する水道の蛇口は心臓の拍出量、指で押さえたホースは血管抵抗と考えると血圧というのは拍出量×血管抵抗で表す事ができると理解できたと思います。

 

 

どのような昇圧薬があるのか

世の中にはたくさんの昇圧薬がありますが、透析室で良く使われる昇圧薬について説明します。

使用されている一般名と商品名

塩酸ミドドリン:メトリジン

アメジニウムメチル硫酸塩:リズミック

ドロキシドパ:ドプス

エチレフリン塩酸塩:エホチール

などが良く使用されていると思います。

 

透析室でよく使われる昇圧薬の種類

α1受容体刺激薬とβ1受容体刺激薬の2種がよく使われます。

薬理作用としてはα1受容体は抹消血管に分布しているので、抹消血管に作用し抹消血管抵抗が上昇する事によって血圧を上げます。

β1受容体は心臓に分布しているので、心機能が亢進し心収縮力が増強したり、心拍数が上がる事で心拍出量が増えて血圧を上げます。

 

 

薬理作用で分けると・・

血管だけに作用する薬

心機能だけに作用する薬

どちらにも作用する薬

と分ける事ができます。

透析室で良く使う昇圧薬はα1β1受容体のどちらにも作用する薬が主に使われています。

下記に透析室でよく使用される昇圧薬の詳細を記述します。

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血管だけに作用する薬

塩酸ミドドリン:メトリジン

選択的α1受容体刺激作用

服薬して1時間ほどで徐々に血圧が上昇し、数時間で効果が期待できます。

効き目が緩やかな薬なので、服用を開始してから効果が出るまで12週間かかると言われています。

どちらにも作用する薬

アメジニウムメチル硫酸塩:リズミック

交感神経末梢のノルアドレナリンの量を増加させることで、交感神経機能を亢進させる(ノルアドレナリンと競合して交感神経終末に取り込まれることで、ノルアドレナリンの神経終末への再取り込みを抑制する)。

 

α1受容体刺激作用、β1受容体刺激作用により、血管系、心臓系両方から血圧を上昇させる。

リズミックの効果発現時間は健康成人で投与後約2時間となっています。

リズミックの透析患者に対する血中濃度は、透析日でTmax3.6±0.7h、非透析日で4.4±0.7hとされています

 

ドロキシドパ:ドプス

ドプスは体内の酵素(芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素)により、ノルアドレナリンに変換される。

血液透析患者に1300mgを透析開始1時間前に経口投与した場合、未変化体の血漿中濃度は投与6時間後に最高値(1.43μg/mL)を示し、投与36時間後に定量限界以下(0.05μg/mL)となった。また、血漿中ノルアドレナリン濃度は投与3時間以降、投与前値に対し有意な高値を認め、以後投与636時間まで持続した。とあるので効果発現までドプスは6~7時間といわれています。

 

 

エチレフリン塩酸塩:エホチール

血管系(α1刺激作用)、心臓系(β1刺激作用)の両方を示すが、とくに心臓への作用が強い。

心筋収縮力を増加させて昇圧作用を示します。

発現時間:資料なしであるが効果は速やかで2分いないに効果を発揮します。 Cmax30minT1/22.5h

透析除去:資料なしではあるが、タンパク結合率が23%のため除去される可能性は代で透析性は高いと言わざるおえないです。

 

 

注意すること

上記で説明した薬を使う前にカンファレンスなどでなぜ低血圧なのか?をしっかり議論すべきです。

たとえば体重の増えがおおくて時間除水が高い為におこる低血圧なら指導を優先しなければなりませんし、ドライウェイトがあっていないようなら、ドライウェイトの調節が必要です。

また心臓の機能によっても考慮すべきでしょう。

低血圧になったらすぐにエホチール!という安易な選択は避け、しっかり原因を議論するようにしましょう。

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