透析室でのエホチール持続注入の意義

透析施設では本態性低血圧など持続的な低血圧症例の患者様にエチレフリン塩酸塩:エホチールなどを使用する事もあると思います。

エホチールは起立性低血圧、各種疾患若しくは状態に伴う急性低血圧又はショック時の補助治療に使用されるお薬として有名です。

10mg/1mLのアンプル製剤で生食にといて10cc1mg/ml)や20cc0.5mg/ml)に薄め使われる事が多いです。

非透析患者さんには多くの場合2mg10mgをボーラス(ワンショット)で使用するのが一般的です。

 

エホチール注 10mg 添付文書

 

作用機序は血管系(α1刺激作用)、心臓(β1刺激作用)の両方を示しますが、とくに心臓への作用が強く心筋収縮力を増加させて昇圧作用をおこします。

 

効果の発現も早いのも特徴です。まぁだいたい2分以内には効きますね。(経験上)

薬効は上記です、α1受容体刺激もするのに末梢血管抵抗は減少するんですね・・・??

どちらにせよ心臓拍出量がUPで血圧上昇作用を有する事には変わりありません。

 

 

こっからが本題!!

通常ボーラス投与されるエホチールを何故か多くの透析施設では持続注入をしている場合があります。

その投与スピードですが、110mg/h程度が一般的な様です。

正式な添付文書の用法では210mgを静脈内注射する書いており投与スピードまでは書かれていませんが、麻酔科などで血圧上昇作用を狙って使用する際にはほとんど場合ボーラス投与している現状にあります。

 

 

透析時のエホチール持続注入は本当に効果があるのでしょうか?

 

薬物動態

健康成人にエチレフリン塩酸塩0.75mgを静脈内投与した場合、血中濃度の半減期は約2時間である。主代謝産物はエチレフリンのグルクロン酸及び硫酸抱合体であり、24時間で約78%が尿中に排泄される。未変化体の尿中排泄率は約28%である。

静脈内投与した場合、2分で全身に分布し、心筋及び肝に大量に分布した。脳内への分布は認められなかった(ラット2)。

 

エホチールの透析性については資料がありませんが、タンパク結合率が28%とかなり低い為、かなり透析で抜けてします可能性があります。

 

おおよその予想では7割が抜ける可能性ありです。

 

 

持続注入での血中濃度予想

それでは本来ボーラス投与であるエホチールですが、持続注入の場合とどの程度違いがあるのか?を考えてみます。

持続注入での1mg/hの場合とボーラスでの違いは議論するまでもありませんが、持続注入のエホチールとしての効果効能はほぼ意味がない事がわかります。

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持続注入での注入速度を考えてみると、薬物動態で全身に分布する2分間という時間的縛りで考察すると持続注入での投与量は0.033mgとなります。

 

ボーラス投与の1/30程度です。

 

さらに、透析性がかなり高いと予想されているので・・・・。

体重が50kgで高齢者と考えると70ml/kg程度の血液量、透析血流量が200ml/minと考えると17分程度で全身の血液が透析膜を通過し血液が浄化され、かつ血中に投与されたエホチールの7割が除去されるとします。

 

エホチールの血中の濃度の半減期は2時間ですので、持続注入(少ないと)による時間的蓄積の効果も透析で持続的に除去されるという観点から意味がないという事がわかります。

 

それでは持続注入でもどのくらいの量をいけば効果が期待できるレベルになるかを考えてみます。尚エホチールの分布容積、タンパク結合などは考慮せず単純に血中内に止まり約7割が透析で除去されるという単純な計算です。

 

今度は全身の血液が透析膜を通過する時間17、透析性が7と考えて計算してみます

投与スピードを20mg/h15mg/h10mg/h5mg/hで考えると・・。

 

20mg/hでは17での総投与量は5.67mgです

そのうち7割が抜けるとすると血中に存在する薬物量は1.69mg程度です。

 

15mg/hでは17分での総投与量は4.25mgです。

血中に残って昇圧作用に関わる量は1.275mgとわかります。

 

10mg/hでは17分での総投与量は2.83mgです。

血中に残って昇圧作用に関わる量は0.85mgとわかります。

 

5mg/hでは17分での総投与量は1.417mgです。

血中に残って昇圧作用に関わる量は0.425mgとわかります。

 

ボーラス投与なら一瞬でmg単位の薬剤が血中内に導入されますが、5mg/hでは17分で0.425mg程度しか血中に残らない計算です。

 

血中動態は分布など上記のような単純な計算とは異なる為一概には言えませんが、ボーラス投与での用法用量から持続投与では10mg/h程度前後ないとエホチールとしての効果は薄いような計算です。

 

あくまでも個人的な見解ですが透析室での低血圧患者に対する5mg/hまでのエホチール持続注入は、臨床の経験からもあまり意味がないような気がします。

もしエホチールの持続注入をされている施設があれば、その効果の判定をぜひ教えてください(笑)

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