人工心肺時の灌流圧について

人工心肺を用いる場合、灌流圧についてどの教科書をみても60mmHg以上を保つように書かれていることがほとんどです。

この灌流圧ですが何をもって定められているのでしょうか?

そして最適な灌流圧はどの程度なのか最新の知見について考察してみようと思います。

 

まず、なぜ60mmHg以上なのか?

PubMedで検索してみます。

検索する語句は”Perfusion Pressure   CPB  CardiopulmonalyBypass”で検索しました。

そうすると

↓こんなんとか

Lower perfusion pressure during hypothermic cardiopulmonary bypass is associated with decreased cerebral blood flow and impaired memory performance 6 months postoperatively.

 

非拍動人工心肺下手術90例を対象に
脳血流量 :133Xe measurement
認知記憶:IMTscore
を術前T1と術後5-6ヶ月後T2に評価。

脳血流量の減少は認知記憶の低下に関連していた。
脳血流量の減少は人工心肺中の60mmHg以下の平均動脈圧と関連していたというわけ。

脳血流量の減少の程度が大きいほど認知機能が悪化していた。
人工心肺中の灌流圧が60mmHg以下に維持した患者は術後の脳血流量が減少する傾向にあったんだそうです。

だから
CPB中の灌流圧を60mmHg以下に下げて維持すると術後5ー6ヶ月経過したときの脳血流量が低下し、記憶力低下につながってしまうという結果。

 

↓下のも同じ脳関係です。こっちはラットですけどね。

The effect of blood pressure on cerebral outcome in a rat model of cerebral air embolism during cardiopulmonary bypass.

ネズミで90分間の人工心肺をします。

50mmHg(低平均動脈圧)

60〜70mmHg(標準平均動脈圧)

および80mmHg(標準平均動脈圧)の

心肺バイパス中の平均動脈圧管理において異なる3群で評価。

脳梗塞容積?が決定された術後第3日および第7日に、神経学的スコアを評価したんだと。

神経学的スコアは、高い平均動脈圧80mmH以上および標準平均動脈圧60-70mmHg群のほうが低い平均動脈圧群より良好。

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高い平均動脈圧は、術後第6および7日に標準および低平均動脈圧と比較して、より短い水迷路潜時(ラットの迷路実験)をもたらすそうです。

総梗塞容積および梗塞領域の数は、群間で変わらないという内容。

 

↓下のは腎機能に関する内容です。

Cardiopulmonary bypass management and acute renal failure: risk factors and prognosis.

心臓手術後の急性腎不全(ARF)がCPB灌流圧の影響を受け、ARFの危険因子を決定するかどうかを調べている内容です。

CPBで心臓手術を受けた正常な術前腎機能を有する成人患者179人を3群に無作為に割り付けてます。

CPB中の平均灌流圧が

60mmHg未満

60-70mmHg

70mmHg以上

中枢静脈圧、利尿薬の必要性、尿量、体液バランス、アシドーシス、血清中のカリウム濃度、血流輸血の必要性、腎臓、心血管および呼吸器合併症、人工肺換気の持続時間、滞在期間ICUおよび病院での死亡率および死亡率の統計をとってます。

手術中の尿出力は、動脈圧が低いと統計学的に有意に低かった。(あたりまえかぁ)

術後初期のARF発生率は群間で差がない。

術中動脈圧の違いによるの他の合併症(心血管、呼吸器、神経障害、出血など)には差がない。まじか!!

19例のARF(10.6%)があったが、これらの患者のどれもが透析を必要としなかった。

年齢と心停止持続時間がARFの最も重要な危険因子だったそうです。

あんまり、腎臓に関しては灌流圧は大した影響はないみたいですね。

 

ちゃちゃっと検索するだけで、これだけの論文がでてきました。

動脈圧を60mmHg以上にするというは臓器保護と言うよりは脳保護戦略として重要だと言う事がわかります。

また、結果をまだ見る事ができなかった面白そうな論文に↓

Perfusion Pressure Cerebral Infarct (PPCI) trial – the importance of mean arterial pressure during cardiopulmonary bypass to prevent cerebral complications after cardiac surgery: study protocol for a randomised controlled trial

というものがあります。

これは無作為化試験によって灌流圧が脳に与える影響について詳しく解析するstudyです。

動脈圧を40-50mmHgの群と70-80mmHgの群に分けて解析するみたいで脳梗塞のリスクなど今までは低灌流の影響を調べていた論文が多い中、高い灌流圧でのリスクファクターの解析するみたいです。

今後楽しみですね。

 

結論から申し上げるに

Pubmedから検索した結果から、低灌流圧は認知機能などに影響を与えそうと言う事がわかりました。

術中の低灌流によって、脳血流が減る(脳の自動調節能以下の圧になってしまう)と言う事なんだろうと思います。

脳の自動調節能に関しては60mmHg以上と80mmHg以上という2つの意見があるみたいですが、人工心肺の下限灌流圧に限っては60mmHgとしたほうがよさそうですね。

実際、教科書などに60mmHg以上となっている理由がそこにあります。

 

逆に脳血流量が維持できていれば灌流圧を下げてもOKと言う事ですよね?

だから、INVOSなど脳の酸素化や脳血流量をモニタすれば灌流圧を下げても認知機能などの悪化を防ぐ事になりえます。

 

また、高い灌流圧70mmHg以上に関して脳や臓器に対する影響の研究は未だ未解明で、PPCIの解析をまたねばなりません。

 

 

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