心臓カテーテルでの冠動脈の見え方について 撮影角度

心臓カテーテル検査や治療において冠動脈造影は必須です。

 教科書などで冠動脈の解剖は必ず学びますが、初心者が実際に冠動脈造影した動画や静止画をみると、角度や見え方でどこが回旋枝でどこが前下降枝なのか?など、よく解らなくなるのは”心臓カテーテルあるある”と言っていいでしょう。

 

今回は、X線造影装置の撮影位置による冠動脈の見え方について説明していこうと思います。

 

Cアームの位置による見え方

X線造影装置の管球の位置による名称があります。

患者さんから左側に傾けたらLAOと言い、患者さんの右側に傾けるとRAOといいます。

 

さらに、上下の方向にも名前がついていて、上側(頭側)に傾けるとCranial(クラニアル)と言いドクターによっては、頭振りなどと言ったりもします。

また、患者さんの足側に傾けると、Caudal(カウダール)と言いこちらもまた、ドクターや施設によっては、”腹振り”や”足振り”などと言います。

 

これらの上下左右の管球の振り方で、様々な角度で冠動脈を観察するのです。

 

 実際の造影映像の見え方ですが、下の図の様に放射線がアーム下側の管球から放射され上側で私たちが認識できる映像になるので、管球の受け側から心臓を覗いた様な映像になります。(図の様に目で覗いている様なイメージ)

 じつはこの事を知っていれば、心臓と冠動脈の解剖的な位置や立体的な構造を知るだけである程度冠動脈造影の事を知る事ができます。

 

 

冠動脈について

教科書などでは図のように冠動脈に番号が振られた平面図で説明されています。

右冠動脈はRCAと言いAHA分類では#1〜#4までで分類されています。

RCAは右心系と左室下壁を栄養してます。特に下壁領域は重要です。

 

左冠動脈はLCXとLDAとがあり、AHA分類では図のように#5〜#15まで分類があります。

左前下行枝(LAD)は左心室前壁、中隔前壁

回旋枝(LCX)は左心室側壁、後壁の一部を主に栄養しています。

平面図での理解は冠動脈の立体的な走行が理解できないので、心臓カテーテル検査での造影映像がよくわからない原因となります。

 

実際には下図の様に大動脈基部のバルサルバ洞から右冠動脈と左冠動脈がでています。

右冠動脈は心臓を正面とするとやや大動脈の正面あたりから出ており、左冠動脈は心臓を正面とすると左横から後ろのほうから出ています。

 

大動脈弁は三尖弁なので、右冠動脈が出ているタスクにあたる弁を右冠尖、左冠動脈が出ているタスクにあたる弁を左冠尖といい、もうひとつの弁を無冠尖といいます。

 

 

アーム方向と冠動脈の見え方

管球の振り方向と冠動脈の解剖がなんとなくわかったところで、代表的な角度とビューをご紹介。

 

 

右冠動脈編

正面での映像はこんな感じです。

LAO40°〜60°

アームを患者さんの左側へ移動させます。だから向かって右から心臓を見る感じです。
RCA全体を見渡すビューになります。

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LAO30°程度-Cranial30°程度
今度はアームを少し頭側に移動させ、同じく心臓を右側からみるビューです。
心臓を少し頭側よりみるので#4がよく見えるようになります。

RAO30°
こんどはアームを患者の右側に移動させ、心臓を向かって左より覗くようなビューです。
RCAは大動脈の右側より出ているのでこのビューによってRCAの近位部がよりくっきり見えるのです。
このビューは主に#1〜#3までの観察に適しています。

 

左冠動脈編

正面での映像はこんな感じです。

 

 

RAO30°前後-Caudal30°前後

アームを患者右側に倒し、さらに足側から心臓を覗くビューになります。
左冠動脈全体が見えます。
特にLAD、CX近位部、OM近位部などの描出が良いとされます。

RAO30°前後-Cranial30°前後

アームを患者の右側でさらに頭側から心臓を覗くビューです。
このビューではLADの中間部から遠位部が主に見えます。

正面AP-Cranial30°前後

左冠動脈を正面でかつ頭側から撮影するビューになります。
LADの中間部やD1の分岐などが見えます。
CXはこのビューではあまり評価する事はまれですね。

LAO40-60°前後-Cranial30°前後

アームを患者の左側に振り、さらに頭側から心臓を覗くビューです。
通称”エルクラ”なんて呼ばれ方もします。
LADの近位部や中間部、Dgを見るのに適してます。

LAO45°前後-Caudal30°前後

アームを患者の左側で、さらに足側から心臓を覗くビューになります。
通称”スパイダービュー(Spider View)”などと呼ばれます。
LMからLAD、LCX分岐部を見るのに適しています。
要するに、左冠動脈の主幹部をみるのに適してます。

 

 

 

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