心臓血管外科の開心術やECMOなどの補助循環で利用されるのが人工肺です。

 

人工肺とは静脈血を灌流させ、酸素を添加する事で、血液を酸素化して体に戻すという本来生体内での肺の役割を担います。

熱交換器を備えているものもあり、体温の調節もできるのも特徴といえます。

 

今回は日本で実際に売られている人工肺について焦点をあて、どのような特徴があるのか?を解説していきます。

2017年7月現在日本で発売されている人工肺は8メーカーで52種類存在しています(個人でデータベースを作成したので、もし間違っていたらご指摘ください)

手っ取り早く一覧表が必要なかたはどうぞPDFをダウンロードしてください↓

 

人工肺2017.pdf

 

まずは人工肺の種類と素材から

あまり、語られる事が少なくネットなどで検索してもあまり知識が得られないのが人工肺の素材です。

体外循環の教科書などには時代錯誤のデータが載っていたりします。

たとえばですが、人工肺の種類に気泡型とかが紹介されていたり、膜型人工肺に関しても均質膜などがあると紹介されていたりします。

すでに2017年現在、このようなシステムを使っている施設はありませんしそのようなデバイスも販売すらしていないのです。

人工肺の種類

気泡型:
直接血液に微小気泡をブクブクさせて酸素化します。このタイプはもうありません。

膜型:
フィルムタイプ
コイル型と積層型がありましたがもうすでにこのタイプも存在しません。

中空糸タイプ
2017年現在はこの中空糸タイプしか存在しておりませーん。

中空糸タイプとは読んで字の如く中が空の糸で、その中空糸を束ねたものをまとめ、中空糸の外側に血液を流し、内側に酸素を流す事によって血液を酸素化します。

血液と接触する部位をスキン層といい、中空糸の素材の種類によりスキン層の状態は異なります。

たとえば多孔質膜なら、スキン層はたくさんの穴が空いておりそこからガス交換がなされます。

複合膜の場合、スキン層はシリコーン膜の均質膜でガス交換は薄いシリコーン膜を介して行われます。

 

 

人工肺の素材について

なんとなく人工肺についてわかったところで、人工肺に使われている膜素材について説明します。

学校や教科書ではまず1、均質膜 2、多孔質膜 3、複合膜と教えられます。
均質膜はシリコーンが主で、多孔質膜はポリプロピレン複合膜はポリプロピレン+シリコーンなどと習ったはずです。

しかし現在ではシリコーン単体での均質膜製品は存在せず、新たにグラジエント構造(非対称膜)の合成高分子膜が存在します。

 

ポリプロピレン:多孔質膜

日本で販売されている人工肺のほとんどが短期使用目的の開心術を想定しています。

ですからより酸素化の効率がよい多孔質ポリプロピレン膜を使用したものが主流で、また製品としてもこのポリプロピレンの多孔質膜が圧倒的に多いのが特徴です。

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 例にあげるとテルモだとCAPIOX のFX、RXシリーズ JMSだとOXIAシリーズ、MERAのHPO-21FHP-P、skipper、MAQUETのQuadroxシリーズ、LivaNovaのinspireシリーズなどです。

まぁ販売されている商品のほぼ全てといったほうが良いかもしれまん。

 

ポリプロピレン+シリコーン:複合膜

複合膜として存在するのがポリプロピレンを支持体にして中空糸の外部にシリコーンをコーティングしたものがあります。

なぜこのようなものがあるのかというと、多孔質膜の多孔質ポリプロピレンは実際に中空糸に微小な穴が空いているので、酸素化効率は良いのですが長時間の人工肺使用例では疎水性の膜が浸水化してしまし、血漿が穴から漏れ出てしまう現象がおきます。

これをプラズマリークと言ったりします。

 

それを抑える為に、均質膜を多孔質膜にコーティングする事で血液と接触する部位を穴のないスキン層とする事ができ大幅にプラズマリークの頻度が減り長期の人工肺使用が可能となります。

欠点は酸素化効率が少し悪くなりますが、酸素添加を強くすればいいだけの話ですね。

ひと昔の前のecmopcps(最近ではV-Aecmoと統一して言います)では開心術用の人工肺を流量していたので、2-3日程度ですぐにプラズマリークを起こし、すぐに肺交換なんて事もざらでしたが、最近では長期使用を目的に次に紹介する非対称膜やこの複合膜の利用が進んでいます。

 

ポリメチルペンテン:グラジエント構造の膜(非対称膜)

 

グラジエント構造とは、ただ単純に中空糸の内側と外側の緻密差が異なった膜の構造で、血液が触れる外部側がより緻密になった人工肺が販売されています。

テルモのLX膜や二プロのBIOCUBE、トライテックの7000LTなどが有名です。

この膜も、長期使用が可能であります。というより、長期使用膜ではすでにポリメチルペンテンが圧倒的に実績があるし補助循環でこのタイプの膜を使っていないとなんで?っていうレベルです。

補助循環でもしプラズマリークが起こり回路を変えないといけない事例があるとします、回路を変える場合循環停止しなければならず、外科医の手技や技師の手技ミスにより3分以上の循環停止となれば脳障害は必須です。

そんなリスクをわざわざ起こさないように初めから人工肺を長期使用目的のものを使用するというのは常識になりつつあります。

 

膜の素材は主にポリメチルペンテンという素材が使われています。

ただ、二プロだけ合成高分子の総称である”ポリオレフィン”とカタログに書いており、ポリメチルペンテンとは違うような印象がありますが、おそらく膜素材はポリメチルペンテンでしょう。

なぜなら疎水性のグラジエント構造に適した合成高分子膜はポリメチルペンテンが一番で、その他にはPTEFなどしかないからです。

 

以上が2017年7月時点での人工肺に関する素材と種類です。

個人がデータベース作成しているので、間違いや記載ミスがあるかもしれません。

参考程度ですので、ご了承ください。

 

 

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