人工心肺を用いた心臓血管外科手術の際にも実は血液浄化の変法を行う事があります。

今回はその血液浄化の方法の分類と国際的に見た時の”効果”についてアメリカ胸部外科学会のガイドラインを元に説明します。

 

まず、ガイドラインについてですが、The Society of Thoracic Surgeons(胸部外科学会)が2011年にUPDateしたthe Society of Cardiovascular Anesthesiologists Blood Conservation Clinical Practice Guidelinesを出しています。

要は心臓外科手術周術期輸血ガイドラインになります。

日本では2013年くらいにさらっと学会などで取り上げられましたが、CEの中では知らない人も多くいます。

 

ガイドラインですから、しっかりとした医療エビデンスが記載されていますので、信用できます。

 

このガイドラインは人工心肺時の限外濾過について記載されているのが特徴で、限外濾過の変法3種類での術後出血や輸血についてガイドライン上でエビデンスを示しています。

 

 

それでは中身から説明していきます。

まず、ガイドラインはエビデンスレベルとクラスが定義されています。

まぁみたまんまです。

要はレベルAでクラスが若い番号なら最高に信用できると言う事ですね。

 

 

人工心肺で用いる限外濾過法について

こっからが本番!!

じつはこのガイドラインには人工心肺で行う3つの限外濾過法について記載されていいます。

原文を載せておきます。

”Ultrafiltration is an option to limit hemodilution sec- ondary to CPB. Ultrafiltration devices can be integrated in parallel into existing CPB circuits for this purpose. Ultrafiltration filters water and low-molecular weight substances from the CPB circuit, producing protein-rich concentrated whole blood that can be returned to the patient. In cardiac surgery, three variants are utilized: (1) conventional ultrafiltration run during CPB but not after; (2) modified ultrafiltration (MUF) run after completion of CPB using existing cannulae; and (3) zero balance ultra- filtration (ZBUF) similar to conventional ultrafiltration but with replacement of lost volume with crystalloid solution. A number of investigations, including a meta- analysis of 10 randomized trials [347], focused on use of these methods during and after CPB.”

 

(1)ですが原文では”従来通りの限外濾過”で人工心肺後には行わないという記述がありますので、人工心肺中に行う限外濾過と言う事がわかります。

これをConventional UltraFiltration = CUF(カフ)といいます。”Conventional”=”従来の”です

いってみればただ単にECUMで除水しているといっていいでしょう。

 

(2)modified ultrafiltration (MUF) run after completion of CPB using existing cannulae; 

とあります直訳すると、”既存のカニューレ”を用いてCPBを完了した後に”modified”(改質)の限外濾過を行う事とあります。

既存のカニューレというのは上記(1)で使用するCUFの事です。

ですのでMUF(マフ)というは限外濾過を人工心肺を離脱した後に行うCUFと言う事です。

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このMUFだけが送脱血の場所をどの部位からするかで施設のカラーがでたりします。

人工心肺装置の標準的接続方法およびそれに応じた 安全教育等に関するガイドライン によれば以下の種類がよく使われます。

  1. A-V MUF:体外循環終了後の送血カニューレより脱血し、脱血カニューレ へ返血する。
  2. V-V MUF:脱血カニューレの 1 本より脱血し、別の静脈へ返血する。
  3. V-V MUF(ダブルルーメンカテーテル使用)。模式図 3-3 

 

 

 

(3)(3) zero balance ultra- filtration (ZBUF) similar to conventional ultrafiltration but with replacement of lost volume with crystalloid solution.

とあり、直訳するとCUFと同様に体外循環中に行う限外濾過だが、限外濾過で失われた濾液分の容量の補益を行う血液浄化になります。

だからゼロバランスと書いているのです。

また、ゼロバランスUFは他の呼び方でDUF(ダフ)といったりします。

このDはDilutional(希釈と言う意味です。

 

 

 

Ultrafiltrationのエビデンスを読み取る

さぁなんとなく人工心肺中(CPB)の血液浄化がわかったところで、世界的には(アメリカ的には)どのように評価され医療エビデンスが示されいるのでしょうか?

またもやガイドラインを読んでみます。

上記のように書いてありました。

まず、上の文章はクラスⅠなので確実にエビデンスがあり、さらにエビデンスレベルもAなので、大規模RCTで証明もされています。

 

内容は”人工心肺を用いた大人の心臓手術での血液保存および手術後の失血を低減するために、MUFが有効です。という内容です。

 

 

次に下の文章はクラスⅡbなので有効性や有用性はエビデンス的に確率されていませんが、やってもとくに問題はないでしょうっていうやつです。

こちらもエビデンスレベルはAなので大規模なRCTで実証されているので間違いないでしょう。

 

それで何が書かれているかと言うと

成人の心臓手術における血液保存および手術後の失血を低減するために、CUFまたはDUFの利点は十分に確立されていません。

そう書かれています。

その後に、RCTの結果やなぜこのような見解にいたったかに関する証拠などが記述されています。

 

 

ただこのガイドラインは周術期や手術中の出血や輸血などの血液保存に関してのみの見解です。

 

↓最後に私の言葉で簡単に説明してみます。↓

心肺中の限外濾過は術後出血などにはぜんぜん関係ないよ、むしろCUFは意味ないよ。

どうせするなら、CUFで体内ボリューム削るより、たくさんのボリュームを保持して楽に心肺離脱して、後でしっかりMUFした方が出血、血液保存、体液バランス調整、メディエーター除去の面でいいよ。

 さらに、DUFに関しては通常の患者さんでは、かなり意味がないばかりか最初からするのは有害ですよ。
 ただし、腎機能が悪かったり、早期に血液補正したい場合はDUFが最も効率が良いので術中からDUFを選択したほうが良いよ。

以上人工心肺で行う血液浄化でした。

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