シャント音はなぜなるか? スリルはなぜ感じるのか?

透析施設にお勤めの看護師さんやMEさんはシャント音の聴取やスリルの触診は毎日行っているでしょう。

 

シャント音やスリルがどうして発生するか?についてはよく”乱流”や”血流速度”に起因していると解説しているサイトや書籍はありますが、曖昧に説明しているサイトがほとんどです。

たとえばヤフーの知恵袋では口笛の原理と同様であり、狭いところを通る血液の速度があがりシャント音が鳴ると説明していました。

イメージはしやすいですが、流体力学上においてシャント音やスリルの発生メカニズムは上記”知恵袋”の説明は間違っています。

 

シャント音はなぜ聞こえるのか?

じつはシャント音がなぜ鳴るのか?の詳細は未だ解き明かされていません。

しかし、大体はこうだろうという事は解明されているのでその詳細をご紹介します。

 

 スリルとは少し切り離してシャント音にだけ焦点をあててその発生メカニズムについて勉強していきます。

 

 まず音として聞こえるというのは物体などが可聴周波数域の振動となる事で聴診器のダイアフラム→空気振動→鼓膜→神経→脳 という伝達で音として私たちは認識します。

 

その振動がシャント音の正体なのです。

 

このシャント音を構成する振動発生メカニズムはなんと2種類あります。

 

 

その1

変動力による音

変動力による音は流れによる物体表面の圧力変動によって発生する音です。

この音は流体表面の圧力変動が起こりやすい部分で発生するのですが、動脈と静脈の吻合部でよく聴取されたり狭窄部から中枢部でよく聞く事ができます。

音としては”ビュービュー”や”ザーザー”、”ジャージャー”というゆわいる”ザ・シャント音”になります。

動脈と静脈の繋ぎ目では必ず聴取できるメカニズムは動脈は圧力に耐えうる血管壁に対して、静脈壁は薄く伸展性に乏しいので、吻合部で発生した乱流などによる流体表面の圧力変動が静脈壁を直接振動させ、可聴周波数音を発生させるのです。

 

その2

内部応力による音

 乱流による音は流体の内部応力によって発生します。

みじかな例として水銀血圧計のコロトコフ音が良い例です。

血圧計のコロトコフ音は上腕動脈を血圧以上の高い圧でカフにより締め付けます。

カフの圧を徐々に緩めていき上腕動脈が開通したときに”トンっ”と小さなコロトコフ第一音が(最高血圧)が聞こえてきてそのあと”ドン、ドン”と徐々に音が大きくなり最後には音は消える点(最低血圧)で血圧を測定します。

このコロトコフ音が応力乱流による伝達音なのです。

 

聞こえ方は”ザーザー”ではなく、”ドン、ドン”という”拍動音”になります。

もっと身近な例はシャントが詰まった時に聞こえる拍動音です。

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スリルとは?

実はスリルとは上記で説明したシャント音発生メカニズムにおけるその1の、”変動力による音”を直接触診している事により感じます。

流体の圧力変動→静脈壁の振動→組織の振動→触れている手で感じる

シャント音とスリルは表裏一体なのです。

 

 

まとめ

シャント音は内部応力と流体表面の圧力変動に起因する音の複合音です。

ですので、シャントが閉塞すると内部応力成分だけが大きくなる事から、”拍動音”となるのです。

 

 逆に吻合部でないとことろでシャント音が聞こえたり、スリルが観察されるのは狭窄部位によるジェット流が狭窄部位より中枢側の静脈壁を流体表面の圧力変動によって直接震わせる事に起因します。

 

あまり、語られる事が少ないシャント音やスリルですが、流体力学の観点からみてみると意外に面白いものです。

じつは流体と音のメカニズムはわかっていない事もたくさんあって2008年まで、音のでるヤカンがなぜピーとなるのか?も詳しく分かっていませんでした。

私たちが当たり前のように思っているものでも真実の詳細は解き明かされていない事もあるので、いろいろ調べてみるのも良いかもしれません。

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