透析装置 静脈圧表示の科学 陰圧??

透析治療中において回路内圧である静脈圧のモニタリングは重要項目のひとつです。

さまざまなサイトや書籍では静脈圧の高い、低いでどのような事がわかるか?どのような対策が必要か?がよく解説されています。

そういった静脈圧ですが、よく陰圧の値になっている場合があるのをご存知でしょうか?

そもそもそういったもんだと理解していれば気にもならないかもしれませんが、静脈圧が陰圧(マイナス値)になるという事は実際にはありえないことなのです。

血管の中がマイナス圧(陰圧)になっている?と言うことは静脈が吸い込むってことですよね?

針でも誘うものなら空気を吸い込んでしまいます・・・そんなの絶対にありえないことです。

 

透析装置で計測している静脈圧は本当の静脈圧でない!!

内シャントを作成した腕の静脈圧はおおよそ10〜50mmHg程度の圧力をもっています。

ですが、透析時に回路をつないでポンプを止めている場合や脱血が取れない状態がつづくと静脈圧はマイナスに傾いたりします。

じつは透析装置で計測している静脈圧は実際の静脈圧とはかけ離れた値なのです。

 

なぜ静脈圧がマイナスに傾くのか?

それはずばり血液や生理食塩水の水頭圧によってマイナスになります。

水頭圧と言われてもなんだかわからないと言う方がほとんだと思います。

水頭圧はわかりやすく言うと落差圧というものです。

透析の回路でも落差圧というものが存在しており、その圧力はVチャンバーの液面から返血部先端までを垂直方向に結んだ高さに規定されます。

図のようにVチャンバー液面より回路先端を上げると静脈圧はプラスがわに上昇します。

図のようにVチャンバー液面より回路先端部を下げる事により静脈圧はマイナスに傾きます。

 

圧力を読み取るぞ!!

だいたい落差圧がわかったでしょうか?

じつはこの高さで圧力がどの程度変動するかがわかります。

そもそもmmHgと圧力の単位ですが、これは水銀柱といって単位面積あたりの圧力を表すものです。(厳密にいうと違います)

圧力とは単位面積あたりに加わる力ですが、その力を水銀の重さを使って水銀の水柱により表しているのです。

この水銀を水に置き換えたのが、cmH2O(センチ水柱)などと呼ばれていて、ただ水銀と水の比重が違うだけで、じつは値の変換ができます。

 

水銀は水の密度の13.6倍も比重が高いのです。

この比重比をもちいて透析静脈圧を考える事ができます。

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2つの図は圧力が下がる時と上がる時の簡易図です。

どちらも高さをh(cm)とすると

静脈圧に表示される圧力(mmHg)は次の式のより求められます。

変動圧力(mmHg)=h(cm)/1.36

回路先端が液面より下にあればこの値はマイナスになり液面より上にあればプラスに傾きます。

 

実際に透析回路で患者さんに繋ぐまえに実験してみるとよくわかります。

この圧力は回路の太さにはまったく関係はありません。

詳しくは説明しませんが、mmHgという単位はそもそも面積(回路の太さ)に規定されないのです。

 

上記のとおり、チャンバーが患者さんより高い位置にあるので、血液ポンプを回していない時は静脈圧はマイナスに傾くのです。

 

わかりやすく図にしてみました。

本当のシャント静脈圧が20mmHgとして落差の高さが50cmとする50cmの換算mmHgが-37mmHgなので、20mmHg+-37mmHgで静脈圧値は-17mmHgと表示されます。

 

だから、脱血がとれなくなると、Vチャンバーに血液が送られない→Vチャンバーの落差マイナス圧力のほうへシフトする→アラームが発報するという事になるのです。

 

最後にもうひとつ

技士さんなどでも間違った知識をお持ちのかたがいるので、もういってんだけ。

静脈圧のセンサー位置と表示値の関係性です。

基本的にマイナスやプラス側に大きく変動する静脈圧値に関してセンサー位置は関係ありません。

センサー位置と液面の高さで圧力が規定されていると勘違いしている人がよくいますが、間違いです。

センサーの位置が規定されるのは大気圧です。

機器のセンサー位置の高さは機器によってバラバラですがセンサー部を大気解放すると圧の値が0になればOKです。

 

 

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